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入選者インタビュー

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石﨑真弥奈

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コンクールについて

─ コンクールを第1次予選から振り返って、ご自身で総括されたことはありますか?
東京国際コンクールに出場出来ることが、喜ばしいことでありましたが、今回何を得たのか、今後は何が課題になるのかを、総括することは多かったです。
コンクールは人との競争ですが、今回は自分との競争であると感じることは多かったです。
─ 出場するにあたって、師事する先生からのアドバイスや、ご自身で気を付けた事はありますか?
先生がたからは、長所を伸ばしたら、自ずと短所も良くなるというお言葉を頂きました。
個人的には、一人よがりにならないことを意識しました。コンクールは、短時間で自分をアピールしなければならないという意識が凄くあります。しかし、前々回のコンクールで、そればかりでもだめだということに気付きました。多く挑戦者が同じ曲を演奏する中で、いかに作曲家の意図を汲み取った演奏が出来るか、それが最も重要なポイントであったと思います。指揮者主体ではなく、あくまでも音楽が主体であることを、心掛けていました。
─ コンクールに出場するにあたり、どのような準備をされましたか?
普段、本番を頂いている時と、勉強の準備の仕方は変えていません。しかし精神的な部分で、やはりコンクールは、普段とは異なる世界の話になるので、それに合わせた精神状況を心掛けていました。コンクール前は、自分と対話する時間を多く設けていました。

─ コンクール第1次予選(緊張もされたと思いますが)で、審査に向かうご自身の想いや、挑戦されて感じた事はありますか?
実は第1次予選が、一番緊張しました。3年前もこのコンクールに出場させて頂いたので、より良い演奏をしなければという気負いがありました。最後は自分をどこまで信じきれるかだと思い、舞台に向かった記憶があります。
しかし、第1次予選の際、振り間違いをしてしまったのです。コンクールの舞台では、それが審査に影響すると思います。そこで諦めては全てが終わりなので最後まで諦めず、課題曲の音楽の素晴らしさを、新日本フィルの皆さんと共有するという想いで、演奏した記憶があります。
この第1次を終えて思ったことは、このコンクールは間違いや欠点を探すのではないと思ってからは、少し気が楽になりました。
─ コンクールの審査終了後の夜などはどのように過ごされました?
本選までの審査終了後は、とにかく勉強でした。良い結果を残すためには、どうするべきだという戦略などを考えるのではなく、この楽曲をどう演奏したいのか、何が面白いのか、ということを考えていました。
本選が終わってからは、同じコンクールを挑戦した同士達と、飲みながら色々語りました。
─ 自由曲(3曲)を選ばれた理由などありましたらお聞かせください。
その当時の私において、楽譜から訴えかけられるものが多い曲を選曲しました。そして、作曲家の残した音楽が、演奏者を助けてくれる3曲です。また、会場の大きさを考え、大編成すぎるものは避けました。本選で演奏した曲は最も好きな曲の一つだったので、演奏出来る機会を頂き光栄でした。
─ 課題曲審査の際、指揮をされるにあたって、ご自身のこだわりや自分の考えを表現することはできましたか?
こだわり、考えを表現することは、常日頃から心掛けていることです。それらは作曲家が残してくれた楽譜からのエッセンスです。しかし、そのこだわりを表現出来ていないのだと実感する機会も、多々ありました。特に事前にリハーサルがある本選でそれを感じました。リハーサルでは、指揮だけでなく言葉でも表現するわけですが、本番実際に演奏して演奏者に伝えきれなかったのだと思った瞬間はありました。逆に、オーケストラの持ち味を生かすことも、必要なのだと返って来た音を聞いて、教えて頂きました。
─ コンクールの時(予選・本選問わず)の服装は、このために用意されたものですか?それとも指揮をされるときにはいつも着用されているものですか?
指揮をする際に、いつも着ている服装です。あまり体の線が出ず、動きやすい服装であることを意識した服装にしています。
─ 様々な勝負時にあって、ジンクスや食事や身につけるものなどに気を付けたり、こだわったりされることはありますか?
どの勝負でもそうだと思いますが、体の健康には気をつけています。例えば、食事だと生ものを食べないようにし、お腹を壊しやすいものは口にしないようにしています。
舞台に立つまでは、心拍数を上げないために走らないようにしています。

指揮とは、演奏者がいないと出来ない。演奏者に感謝をし、どう伝えたら良いかを考えるようになりました。

─ 本選結果を受けてのご自身の感想について。当時感じていたことと現在感じていることとに違いはありますか?
コンクールを受けるからには、どの挑戦者も優勝をしたいと思うはずです。このコンクールで優勝出来ることと出来ないことの差は大きいですから。当初は、もっと良い結果が出せなかったのかと自問自答しましたし、悔しいと感じたのが本音です。しかし、現在はこの結果が自分の実力であることが分かり、その部分を埋めるには何が足りないのかを考えています。審査員の方々から、考える、成長する時間をくれたような感覚です。自分次第では、優勝するよりも多くのことを、学べるのかもしれません。 悔いが、感謝に変わりました。この機会を下さった全ての方に感謝しております。
─ コンクールや入賞デビューコンサートを終えて、ご自身の気持ちや、環境に変化したことはありますか?
環境の変化は、プロフェッショナルなオーケストラと、共演する機会を頂き、経験を積む機会を頂いています。また様々な方との話をすると、コンクール前よりも一人の指揮者として、何をすべきかを問われることが多くなりました。
演奏会を頂くと、そこで自分はどういうことが問われているのか、音楽はもちろんですが、人との関係について、考える時間が増えました。指揮とは、演奏者がいないと出来ない。演奏者に感謝をし、同じ事でもどう伝えたら良いかを考えるようになりました。
信念と過信の違いを、自分の気持ちが揺らがないようにしながら、柔軟な考えが出来る余裕をもつ必要性を感じています。

指揮者について

皆と演奏出来ることが楽しくて始めた指揮という道が、実は結構孤独だということに気付いた時、苦しい時期がありました。

─ 指揮者を目指したきっかけはなんでしょうか?
高校までピアノを専門に勉強していました。その時、ピアノでアンサンブルという経験があまりないのが現状でした。中学生の時から吹奏楽部に所属していたので、そこでアンサンブルをすることで、多くの人と演奏する楽しさを知り、指揮にも興味を持ちました。また、決定的なきっかけは、高校時代、吹奏楽部で一年間学指揮を経験したことです。多くの人と演奏する楽しさと、振り方を変えることにより音が変化する、そこに魅力を感じ、指揮者を目指し始めました。
─ 指揮者を目指すにあたって、苦しかった事、また反対に楽しかった事はありますか?
皆と演奏出来ることが楽しくて始めた指揮という道が、実は結構孤独だということに気付いた時、苦しい時期がありました。孤独だけれども、指揮をする上では人とのコミュニケーションが重要であり、その関係が円滑になっていない時、演奏もうまくいかないという負のサイクルに陥る時は、今でも苦しいです。
また、指揮者に必要な腕の筋肉を鍛える時、なかなか筋肉が出来ず、よく怒られていたので大変でした。そして、始めた頃は何を練習、勉強したら良いのか分からず、一人で鏡の前で指揮を練習しても、音もなく、上達しているのかも分からず、途方にくれた時期がありました。また、違うとアドバイスだけ頂き、何が違うのかさっぱり分からず、苦しい時期がありました。
そして、オーケストラと指揮者の関係を、大学1年生の時に友人に敵対関係と一言で言い表された時は、衝撃でした。それは真実でもあると思いますが、その関係を凌駕した演奏を生み出せた時は、楽しくてしょうがないです。
9割苦しい時間で、1割楽しい時間かもしれません。
─ 指揮者として普段から気を付けている事や、心がけている事はありますか?
肉体的には、俊敏、柔らかな運動が出来るように、またエネルギー切れにならないように、食事と運動を心掛けています。
指揮をする時は、全て私が感じ、考えていることを提示するのではなく、演奏者がどう演奏したいかにも、耳を傾ける余裕を持ちたいと心掛けています。それがコミュニケーションにも、繋がると考えています。
また、自分の指揮が演奏者から見たら、表現がうまく伝わらず違う解釈に見えている時もあるので、返って来た音を聞くこと。また返って来た音で、オーケストラからその楽団の慣習はこうだと教えて頂ける瞬間もあり、冷静に聞くことを心掛けています。
─ 指揮を練習されるにあたってどのような環境で練習をされていますか?
練習出来る環境があるというのは、とても恵まれていると思います。なぜなら、指揮を練習するには少なくとも2人演奏して下さる方に協力を頂かなければなりません。学生時代は、友達にお願いして、練習をさせて頂いたこともあります。実際に振りこう見えていると教えて頂たり、自分でこう見えるのかと考えることもあります。
しかし、卒業してからはそのような環境にいれることはありません。初めて指揮をする曲でも、音楽と相違なく手が自然と動くようイメージをする時はあります。音楽のイメージをして仕事現場に伺い、実際の音を聞いて、反省したりしています。
指揮の場合、楽器を演奏することが出来ないので、練習出来るチャンスはとても少なく、一回一回が貴重です。音楽を勉強する時間の方が圧倒的に多いです。

音楽について

─ ご自身のお好きなオーケストラや作曲家、楽曲(ジャンルは問わず)などはどのようなものでしょうか?
モーツァルト、ハイドンなど古典派、ブラームスなどのロマン派の音楽が好きです。疲れたら、バッハの音楽を聞くことが多いです。
─ 小さい頃の音楽に対する思い出がありましたら教えてください。
小さい頃ピアノを習っていたのですが、練習が嫌いで、どうしたら練習しないで上手になれるかばかり考えていた記憶があります。特にハノンが嫌いで、リズム練習をしないと遊びに行けなくて、凄い速さで練習しました。
最初の演奏会の記憶は、清水和音さんの演奏会で、感動しそれからはちょっと練習に力が入った気がします。その方とコンクールで共演出来る機会を頂き、光栄でした。
─ (余談になりますが)
指揮者になっていなかったらどんな職業についていたと思いますか?もしくは他に体験してみたい職業などございますか?
精神科医になりたかったです。体験したい職業は、オフィスワークと水族館のイルカやアシカなど動物ショーをするトレーナーです。
─ (最後に)
今後の活動の抱負をお聞かせ願えますか?
昨今、女性の指揮者が増えてきていますので、女性の指揮者でも特異に見られず、一つの個性として活動出来るようにしていきたいです。幸い指揮科に在籍している際はそれを感じませんでしたが、社会に出て、女性で指揮をすることが、まだ珍しい存在だということを考えざるを得ない機会も多くあります。
女性であることよりも「何が私の個性であるのか」を、皆様にも納得して頂けることが、今後の抱負です。同時に演奏する上で、音楽の勉強以外の様々な知識が必要です。そのような教養を増やし、また音楽に戻って来た時に、新たな引き出しが出来るようにしたいです。
そして、指揮者の魅力は、最後は人間性、人間力が問われることでもあります。人間として円熟すると、演奏も円熟することは比例すると思います。それは全て自分によるのですが、どのように年を重ねられるか楽しみです。自分の殻に閉じ篭らず、色々な方々や物事から吸収し、人生を歩む。地道に歩み、おばあちゃん指揮者になれたらと思います。
─ 次回のコンクールを目指している方へのアドバイスをお願い致します。
コンクールで賞を得ることはもちろん重要ですが、そこで何を得るか、それが最も今後の為になる。
自分の将来の指揮者像が定まってこそ、東京国際音楽コンクールを挑戦することによって、世界が変わってくると思います。

プロフィール

石﨑真弥奈

東京音楽大学指揮専攻卒業。同大学院指揮研究領域修了。公益財団法人 新日鉄文化財団 2011年度指揮研究員、紀尾井シンフォニエッタ東京などで研鑚を積む。2009年第15回東京国際音楽コンクール〈指揮〉第二次予選出場。2010年第2回井上道義氏による指揮者講習会の優秀者。広上淳一、高関健、下野竜也、汐澤安彦、時任康文、三河正典の各氏に師事。尾高忠明、ボリス・ベルキン両氏の公開レッスンを受講。

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